乳がんってどんな病気?
Q1)乳がんになるとどんな症状がでるの?
乳がんになった場合、以下のような症状が見られることがあります。
・乳房、わきの下にしこりがある
・乳房にひきつれ、くぼみがある
・乳頭の異常(湿疹・ただれ・分泌物)がある
・乳房皮膚の異常(発疹・はれ・ただれ)がある
しかし、ごく初期の段階では、しこりもわからないほど小さかったり、痛みや体調不良などの自覚症状もないことが多いのです。乳がんを放置しているとリンパ節や他の臓器に転移しやすいため、少しでも違和感を感じることがあったら医療機関で検査を受けることはもちろん、自覚症状がなくても定期的に検診を受けることが大切です。
Q2)乳がんになる人って多いの?
欧米人と比べて日本人には少ないとされてきた乳がんですが、食生活やライフスタイルの変化に伴って、日本人女性の患者数は急増しています。2004年には乳がんと診断された患者数は5万人を超え、一生の間に乳がんになる確率は14人に1人とされています。
また、日本では乳がんで死亡する人は年々増加しており、2011年には13,000人近い女性が亡くなっています。一方、欧米諸国では乳がんで死亡する人は減少傾向にあります。それらの国では検診の受診率が高く、乳がんの早期発見が可能になっていることが大きな要因だと考えられています。
Q3)癌になりやすいのはどんな人?
最も大きなリスク要因は遺伝的なものです。とくに母親や姉妹に乳がんになった人がいる場合は、リスクは2倍になると言われています。
また、乳がんは一般的に次のような人がなりやすいといわれています。
・初潮年齢が早かった方(11歳以下)
・出産経験のない、または初産年齢が遅い方(30歳以上)
・閉経年齢が遅かった方(55歳以上)
これは、乳がんの発生には、女性ホルモンであるエストロゲンが大きく影響しているためです。エストロゲンは女性の体を作るための重要な働きをしているホルモンですが、分泌されている期間が長いほど、乳がんのリスクが高まるのです。妊娠・授乳期には分泌が止まるため、それだけリスクが減ることになります。閉経後はエストロゲンの分泌が止まりますが、別のホルモンが脂肪組織でエストロゲンに変わります。したがって、閉経後の肥満もリスクの一つです。
日本では、乳がんにかかる人は30代から増加し始め、50歳前後をピークとして減少する傾向にあります。しかし、20代でも、閉経後でも乳がんになる場合があります。年代にかかわらず、乳がんの危険性を認識して、セルフチェックを続けることや検診を受けることが大切です。
Q4)乳がんができやすいのはどこ?
乳がんが発生する場所は、左右の乳房の外側上部が5割近くを占めています。
しかし、他の部位での発生も、けっして低い割合ではありません。
セルフチェックの際には、乳房全体をていねいに調べましょう。
Q5)乳がんの予防法ってあるの?
閉経後の肥満が乳がん発生のリスクを高めること、逆に適度な運動が予防効果を高めることは、ほぼ確実だと言われています。
また、科学的に証明されてはいませんが、大豆食品や魚、野菜、果物、お茶などに予防効果が認められたという報告もあります。
ただし、すべてのがんについて言えることですが、決め手となる予防法はありません。
定期的な検診によって、早期の段階で発見することが大切です。
Q6)乳房に異常があったら、すべて乳がんなの?
しこりなどの異常があれば、すべて乳がんなのではありません。大半は以下のような良性の病気によるものです。
乳腺症 | 30代から40代の女性に多く、しこりや痛みを伴うことが多い。女性ホルモンの不均衡で起こるため、生理不順やストレスなどが誘因となることも。 |
乳腺線維腺腫 | 10代から20代の女性に多く、しこりは表面がなめらかで硬く、よく動く。それ自体は良性だが、急激に大きくなるものに悪性の場合があるので要注意。 |
乳腺炎 | 授乳期に起こりやすく、乳房が赤くはれて痛みを伴う。 |
しかし、自己流で判断することはたいへん危険です。少しでも違和感を感じることがあったら、医療機関で検査を受けましょう。
Q7)男性も乳がんになるの?
男性にも乳腺はあるので乳がんになることはありますが、年間の死亡数は女性の100分の1以下のまれながんです。
ただ、女性に比べて他の組織に転移しやすいため、注意が必要です。
検診について
Q1)乳がんを見つけるには、どんな方法があるの?
乳がんを調べるにはセルフチェック(自己検診)と医療機関での検診があります。医療機関では視触診や超音波検査(エコー)、マンモグラフィーなどの検査を行います。セルフチェックで異常がなくても、これらの検査で早期の乳がんが見つかることもあるので、定期検診を習慣づけたいものです。視触診、超音波、マンモグラフィーを併用することで、乳がんの約9割は発見することができるといわれています。
Q2)乳がん検診って、何歳くらいからどれくらいの頻度でいけばいいの?
2004年に厚生労働省から、40歳以上の女性に2年に1度の検診(視触診とマンモグラフィーの併用)を実施するという指針が出されました。また、医療機関では年齢によって有効性が異なるとして、超音波検査を併用することもあります。マンモグラフィーは全体像が把握でき、最も精度の高い検査方法とされていますが、まだ乳腺の発達している世代では、しこりを見つけるのが難しい場合があるためです。乳がんにかかる人は30代から増加し始めますので、30歳になったら、どのような検診を受けるべきか医師に相談して、ぜひ検診を受けてください。
検査は一度やればよいのではなく、続けることが重要です。合わせて、20代を含めたすべての女性にぜひ行っていただきたいのが、セルフチェック。定期的な検診が早期発見につながります。
Q3)乳がん検診はどこの病院でも受けられるの?
女性の病気なので婦人科と思いがちですが、乳がん検診は乳腺を専門とする「乳腺科」「乳腺外科」「乳腺外来」」で受けられます。病院によって受けられる検査方法が違うこともあるので、事前に確認しておきましょう。また、NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会が、施設・機器の精度、診療放射線技師の撮影技術、医師の読影能力に関する認定制度を設けており、ホームページで認定医師、認定技師、認定施設のリストを公開しています。
Q4)乳がん検診の費用って、どのくらいかかるの?
各病院によって差はありますが、乳がん専門のクリニックで視診・触診・マンモグラフィーなどの検査を受けると約5,000円~10,000円かかるようです。また最近では40歳以上の女性を対象に乳がん検診の費用を負担するなど、乳がん検診をサポートする自治体が増えています。お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
また、2010年から厚生労働省の乳がん検診推進事業として、一定の年齢(40歳、45歳、50歳、55歳、60歳)に達した女性に対して、乳がん検診の無料クーポン券が配布されることになりました。
Q5)乳がん検診に行くのが恥ずかしいのですが・・・
女性にとって乳房はデリケートな部分。視診や触診があると聞くと尻込みしてしまうのも無理はありません。そんな女性の気持ちに応え、最近では女性専門外来を設ける病院が増えており、インターネットなどでも情報を得ることができます。病院での検診は、乳がんを早期に発見するためにはとても重要なこと。ぜひ勇気を出して検診を受けましょう。
マンモグラフィーってどんな検査?
Q1)マンモグラフィーってどんな検査なの?
マンモグラフィーとは、乳房専用のX線検査、いわゆるレントゲン検査で、板状のもので乳房をはさみ圧迫して撮影します。撮影は、左右それぞれ、上下と斜め方向から、計4回行います(検診では斜め方向のみの場合があります)。乳房を圧迫するのは、平たくして撮影することで病変をより鮮明に写し出すとともに、厚みを薄くすることでX線の被ばく量を減らすためです。
マンモグラフィーは、乳がんの初期症状である微細な石灰化などを検出できるため、早期発見に有効です。また、乳がんの検診では最も信頼性の高い検査方法だと言われています。
Q2)マンモグラフィーと超音波検査(エコー)の違いは?
マンモグラフィーとは乳房専用のレントゲン検査で、圧迫板で乳房をはさみ、薄く引き延ばして撮影します。超音波検査とは超音波を出す「プローブ」と呼ばれるセンサーをあて、はねかえってくる音波を画像化して、乳房内部の様子を映し出します。それぞれに長所と短所があります。
マンモグラフィー | 超音波検査(エコー) | |
画像化できる範囲 | ○ 全体の状態を把握できる | △ 得られるのは部分的な情報 |
微細石灰化の検出 | ○ 0.1~0.5mmの微細石灰化の検出が可能 | △ 微細石灰化の検出は困難 |
しこりの検出 | △ 乳腺が発達している場合、しこりの検出が難しいことがある | ○ 乳腺と乳がんのしこりの判別が容易 |
なお、最も精度の高い検査方法とされているのは、マンモグラフィーです。日本医学放射線学会やマンモグラフィ検診精度管理中央委員会などにより装置の合格基準が設定され、画像読影の判定基準も設けられています。また、検査技師のトレーニングや医師の読影講習会も全国規模で実施されるなど、精度管理のシステムが整っています。
一般的な検診ではよく用いられる超音波検査については、2007年から乳房検診での有効性を確認する試験(J-START)が開始されました。また、JABTS(NPO法人日本乳腺甲状腺超音波診断会議)により、検診を行う技師や医師を対象とする講習会が実施されています。今のところは検査技師や読影を行う医師の技量が問われる検査であると言われていますが、今後、精度管理が進んでいくことが期待されます。
Q3)胸が小さくてもマンモグラフィーは撮れるの?
胸の大きさが撮影に影響することは全くありません。男性の胸でも撮影することができるくらいですから心配いりません。
Q4)X線の被ばく量は大丈夫?
マンモグラフィー1枚の撮影で浴びるX線の量は、1年間に知らず知らずに浴びている自然放射線量の1/6~1/8。1回の検査で受ける放射線量は、東京~ニューヨーク間の飛行機旅行で浴びる宇宙線とほぼ同じといわれています。あちこちの病院を巡って「はしご検査」を受けるようなことをしなければ全く問題ありません。
Q5)乳がん検診に行くのが恥ずかしいのですが・・・
マンモグラフィーは板状のもので乳房をはさみ圧迫して撮影するため、痛みを感じることがあります。圧迫される時間は数秒から10数秒程です。痛みには個人差がありますが、乳房の大きさにかかわらず、乳腺の発達した人の方が痛みを強く感じるようです。若い世代で乳腺が多い場合には、マンモグラフィーより超音波検査が有効な場合もありますので、医師に相談してください。
また、生理の前の1週間くらいは乳房が張って痛みに敏感になることがあるので、生理が始まって1週間から10日くらいの時期に検査を受ける方がよいと言われています。
乳がんの治療について
Q1)乳がんは治るの?
乳がんは治る病気です。ただ、それには早期発見が重要なポイントです。日本乳癌学会の調査によると、2cm以下のしこりでリンパ節への転移がない状態(Ⅰ期)であれば、約90%の人が10年生存している、つまりほぼ完治しているという結果が出ています。しかし、病期が進むほど生存率が下がってしまいます。
早期発見につなげるたにセルフチェックや定期検診を心がけましょう。
病期 | 状態 | 10年生存率 (1990年治療開始) |
|
0期 | 視触診や画像診断で、しこりなどの異常を確認できない。 | 95.45% | |
I期 | しこりが2cm以下でリンパ節転移がない。 | 89.10% | |
II期 | しこりが2cmを超えるか、リンパ節転移の疑いがある。 | 78.60% | |
III期 | a | リンパ節転移が進んでいる場合、しこりが5cmを超えてリンパ節転移もある場合、しこりが皮膚や胸壁に及ぶ場合、炎症性乳がんなど。 | 58.74% |
b | 52.04% | ||
IV期 | しこりの大きさを問わず、他の臓器に転移がある。 | 25.49% |
10年生存率データ:2004年 日本乳癌学会「全国乳がん患者登録調査報告第29号」より。
尚、2000年からは、病期分類が変更されています。
Q2)乳がんになったら、必ず乳房を取らなくてはならないの?
乳がん治療のための外科手術には、乳房を全部切除するものと、部分的な切除によって乳房の形を極端に損なわないようにする乳房温存手術とがあります。現在では半数以上が乳房温存手術であると言われています。しこりが大きかったり乳がんが広範囲に広がっている場合には、全切除が選択されますが、早期がんの場合は温存手術で済むことが多いのです。やはり、重要なのは早期発見です。
乳がんかも・・・と思ったら、検診に行きましょう!
食欲不振や体調不良などの目立った初期症状がないため、気づきにくい乳がん。そのためにもセルフチェックや定期検診が欠かせません。少しでも乳房に違和感を感じたら、すぐに医療機関で診てもらいましょう。